夢は座席で安楽死。

観る→考える→想う→書く。

【舞台】仲直りするために果物を

仲直りするために果物を

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2015年5月29日~6月7日
東京芸術劇場 シアターウエスト

http://shiroyaginokai.com/


第59回岸田國士戯曲賞を受賞された、山内ケンジさんとこの城山羊の会。
開場する随分と前から当日券に並んでる人が沢山いた。
前売りが完売でも、当日券で入れるのって、やっぱり魅力的。
前回の「トロワグロ」がとても好きだったので、観劇ついでにDVD*1も購入できてお得感。

舞台の作り方とか

シアターウエストの囲み方の座席配置だったんだけど、物凄い変則型のセット。
箱庭みたいで、始まる前から思わずじろじろと見てしまった。
落ちてるゴミとか、生えてる草の位置とかがとてつもなくリアル。
なのに「ここは一体どこなんだよ」くらいの、虚構の場所。現実の中の嘘ってまさにこれだよなと思った。


ステージの使い方がとても上手かった。
ワンシチュエーションなのに、使われてる場所が主に3ヶ所あるっていう不思議な感じ。
ただ、座席によっては観づらい位置もあるのかな~と。私は全体がきちんと観れる席だったので、満遍なく楽しめた。ありがたい。


定刻になってもはじまらないな~と思って気がついたら舞台上にキャストがいて、セリフを喋っていて、段々客電が落ちていって、すっかり物語の中。
本当に目の前にこういう場所があって、はじめからそこにいたみたいな気持ちにさせられて不思議だった。
スイッチがいつ切り替わったのかわからないくらい、グラデーションでだんだんしみこんでくる感じ。
シアターイースト・ウエストって天井が高く、音がよくひびく。
だからちょっとした物音とか、靴のかかとが階段にぶつかる音とか、そういうのが物凄いひびいちゃうんだけど、逆に「音をたてちゃまずい」みたいな緊張感とか、笑い声がめちゃくちゃ響く不思議な感じとか、なんともいえない空気感だった。

物語とか役とか

城山羊はとかく、なんでもかんでもリアル。物凄いリアル。
人の動き、会話、言葉、視線、いきざま、存在が、すっごいリアル。
「こういう会話ある」「こいうい奴いる」が、バンバン飛び出る。
フラットに淡々と、現実にいる人たちが偏屈でしょうもない会話を続けていく。
でも、どこか現実じゃない事が起きる。現実じゃないビジョンが広がる。
それが、とても面白くて、気がついたらすっかりはまってしまった。


舞台の上にいる人も、話してる内容も、行動も、かなり日常に近くて、だからクスッと笑いがおきる。
なのに起きてる事がだんだんぶれていって、非日常に切り替わって、ドッと笑ってしまう。
けれどやっぱり、そのスイッチの切り替え時がわからない。
「日常」っていう映像のフィルムがあって、その中からとある1時間40分を切り取ってくる。
で、いくつかのコマをちょっと色塗り替えてそっと戻してしまった感じというか。
本当はもっと些細なアクションで済むことを、あえて非日常に盛ってるのがとてもよい。
「不自然」であることが「自然」に進んでいくから、あれ?これって現実なのかな?って勘違いしちゃう。


それで勘違いしたまま、物語が進んでるのを見て、なんかやっぱりこれっておかしいよな?って思うのだけど、舞台の上の人たちが凄い淡々とリアルな会話をし続けている。
だからまた「こういう会話ある」「こういう奴いる」に戻る。
現実と虚構のグラデーションが、いったりきたり、いったりきたりしていて、その独特なテンポが心地よくてたまらない。
今回は特に、人が死んだり生き返ったり、血まみれだったりとかそういう明らかに「非日常」が起きてるのに、今話すべきことじゃないところを頑固に討論し続けてる。
から、なんか目の前で血まみれになってる人がいても段々どうでも良くなってくる。
そんな事よりその話の結論は結局どっちなんだ!?って方が気になってくるの、とんでもない魔法だ。


城山羊の「性」に対しての反応というか、欲望の描写がめちゃくちゃ生生しくてよい。
欲求に忠実な人、上手くそれを表に出せない人、欲求すらない人、それどころじゃない人の対比が綺麗にでててああ人間って汚い、でも綺麗。面白い。と思わされる。
キヨミ(東加奈子)が、照男(遠藤雄弥)にキスをするシーンで、キヨミはとかく本能的だったのに
照男は心底興味がなさそうというか、何も見えてない感じが特によかった。
ただレイプの描写が余りに生生しかったので、その辺地雷がある人はちょっと辛いかなというところ。
あそこが一番現実的で、かなり怖かった。つまりはそれだけリアリティがあったということなのだけど。


ユリ子(吉田彩乃)が平然とにこやかに嘘をついて、無かった事にするあの感じ。
照男の働きたくもないけど死にたくもない、目に何も見えていないあの感じ。
キヨミの風俗系の仕事をしている事に何も引け目を感じず、逆に汚い目で見てくる奴をバカにするあの感じ。
タカちゃん(松井周)の飄々と他人面して自分が一番当事者なのに目をそらすあの感じ。
岡崎(岡部たかし)の上の人に責められて、下の人をそのまま責めちゃうあの感じ。
丸山(岩谷健司)の怖い人なのにどこか悪い人になりきれないあの感じ。
こういう人たち、ほんとにいるよ、めちゃくちゃいる、こういうのすげーいる。って何回思ったか良くわかんなかった。


人間を見るのが好きだから、城山羊の舞台はこんなにツボなんだろうな。
見て何か討論するどころか、何か投げかけられてるわけではないんだけど、確実になにか刺さってくる。
この「空気感」が私には楽しいんだろうなと思う。
劇場に足を運んで、この空気を体感しないとこればっかりは解らない気がするし、好き嫌いもぱっきり分かれると思う。
でも、はまる人ははまると思うから、次回も私は観にいきたいし、今後も周りにおすすめしていきたい。

*1:本当にいわゆる小さいところの記録映像的な奴だけれど、劇場で2100円で購入できる。