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夢は座席で安楽死。

観る→考える→想う→書く。

【舞台】ア・フュー・グッドメン

【※】ネタバレ 舞台

ア・フュー・グッドメン

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2015年6月19日~28日
@銀河劇場

http://gingeki.jp/special/afew/


ぼんやりしてたら6月後半~7月にかけての舞台の予定があまりなく、何か…と思っていたところ
友人から丁度「明日ヒマ!?」と声をかけられたのでほいほいっと銀河劇場へ。
銀河劇場って、丁度良い広さで好きなんだけどやっぱりここに来ると1日1本になっちゃうよな~と再実感。

舞台の作り方とか

観にいく前日にきちんとあらすじを読んでいったはずなのに、始まる5分前には既に忘れかかっていた。
「サスペンス」であることと、「海兵」であることと、殺人がどうたらこうたらという凄い雑な前情報で重い舞台に挑むこの軽さ。だけれども前情報が無くてよかったかもしれない。
観始めたらがっつり法廷の話だったので、結構頭を使うよな~とは思った。
1時間50分の上演時間なんだけど、体感時間は3時間くらい。淡々と時間軸にそって話が進んでいくからまあそんなものなのかな。
個人的には「誰も悪くない」けど「全員悪い」みたいな話が好きなので、小難しいからこそとても楽しかった。
ただまあ繰り返し毎日観るかというと、結構頭を使うので、私は1回で十分満足!という感じだろうか。
サスペンスと銘打ってるだけあって、緊張感が半端ないので、がっつりおなかいっぱいかつ疲労感はあった。でも観られて満足。


舞台上は八百屋舞台にされていて、大道具は基本動かないし、派手ではない。
フェンスたった一個で世界観が物凄い出ていたし、シンプルだからこそ「ここはアメリカだよ」って言ったらアメリカになるし、「キューバだよ」って言ったらキューバになるし、「法廷です」っていったら法廷になる。
そういう作りも好きなので、演出と相まって銀河劇場の舞台上を8人でとても上手く使っていたな~という印象だった。
銀河劇場でマイクもいれてなかったからキャストの地声も良く響いていたし、別段聞き取りづらいとかもなかったので、自分がまったく介入できない、自分とはまったく関係ない世界の話を見ていた印象だったかも。

物語とか役とか

法と倫理と縦社会と誇りはどこまで共存して、どこからがグレーゾーンで、どこからが狂気で、どの考えが古くさくて、どの考えが新しすぎるのか。
そうした人が悪いのか、そうさせる制度が悪いのか、その制度を作った社会が悪いのか、でも社会はそもそもなんのためにその制度を作ったのか。
というテーマが疲れるけどとても好きなので、終始わくわくしながら観ていた。


結局の所その人間のこだわりも、正義も、その人間にしか解らない物で、歩み寄ることは出来ても押し付ける事は出来ないんだよなと。
他人と触れ合うことで「自分が間違っていた」と思う人もいれば、「やっぱり自分は間違ってなかった」と思う人もいるし
世界は広くて、いろんなこだわりとか、いろんな正義とかがあるよな~というのと、基準として法は存在してるけど、法では裁けないものも納得できないものも沢山あるよな~と思った。
割と「法廷」の話が好きというか、裁判っていうのはまさに「1個のものをどう捉えるか」という話だから、興味ある分野でもあって。
同じものを見ているのに、ここまで捉え方とトリミングとフォーカスの当て方を変えるだけでまったく別物になるだなという可能性が、割と面白い。
まあ結局おたくの「解釈違い」もまさに個々だよなとは思う。次元が違うと言われたらそこまでなんだけど。


キャスト的には小西くんがお久しぶりな感じで相変わらずお顔も声も綺麗でした。そんでもって平埜くんは銀河劇場でははじめまして、という感じ。
平埜くんは初舞台の時からわりと頻繁に出演作を観る機会があるのだけど、あの暑苦しい感じは、外部舞台に出てくるとより目立つな~という印象。
私が観た回も初っ端から噛んでたのだけど「噛みました!言い直します!」くらいの潔さはいいなと思った。
ゴリ押し!とまでは行かないんだけど熱で押して押して押します!という所に、最近は発声とか技量が追いついてきたので、これからがまだまだ伸びていってほしいな~。
後の皆さんはどこかで観た事もあれば、はじめましての人もいて、凄いしっかりしたキャストが固まってたので観ててそれだけで安定感はあったかなという印象。


キャストを知ってる知ってないはさておきとして、話の中で私が1番好きなのは平埜くんが演じるドーソンだった。自分の信念と思い描いてるものを最後まで貫き通した上で、自分の過ちを認められるのってとっても大人だと思う。
「自分の信念を曲げない」という面では、意外と田口トモロヲさん演じるジェセップも嫌いじゃない。
彼の言っている事とか、やっている事って、法と倫理という観念からみたら間違っている事なのかもしれないし、それで苦しんでる人も勿論いたのだけど、彼には彼なりの正義や信念や誇りがあったからこそで。
それを解ってくれる「少数精鋭」がいてくれたらそれでよい、というのがひしひし伝わって、だからこそ結構悲しいなあと思ってしまった。
後は、小西くん演じるロス大尉のソツのなさと完璧さはずるいな~と思った。
彼も自分の信念を貫きながらも非は認められるタイプだったので、好印象。


逆に主演のキャフィに実はずっとイライラしていた。
が、演じてる渕上さんが初舞台だと知ってどえらく驚いた。普通に昔からやっている人だとばかり。
で、イライラしたというのが演技が下手とかそういう話ではなくて、脚本上のキャフィという人間の「ローリスクハイリターン精神」があんまり私は好きではないというか。ずる賢いのはいい事なんだけど。
傷つきたくないから踏み込まない、というのは私もやってしまう事なので、ある種同属嫌悪なのかな~とも思ったのだけど、自分が「こうする!」って決めたくせに上手くいかないと人のせいにしてキレるって、豆腐メンタルも甚だしいわ!という感じだった。
でも彼もきちんと謝れる人だったので、心底嫌いという訳ではなかった。
さらに言うと瀬名さん演じるギャロウェイがもっとも私の苦手なタイプ。
熱血漢で正しいこと言ってくるからこそ否定は出来ないんだけど「世の中そうはいかないんだよね」と思って少し息苦しくなる。
ただ、彼女がいたからこそ救われた人も確実にいるわけで、大事なのは「他人に押し付けない」事かなあ~と思った。


なんだかんだ言って、心のそこから憎いキャラクターが1人もいなかった。
全員どこかしら不器用だからいらいらしたり、自分は理解できなかったりする。
でも本当に自分を曲げないし、最後までまっすぐだったから、「私にはその価値観は理解できないけど、その姿勢は好き」という感じだったのかもしれない。
全員間違ったこと言ってなくて、でもそれがかみ合わなくて、最終的に何に裁かれるのか、でも自分の信念をどう通すのか、みたいなそういう所がとっても面白かったな~と。
静かな世界の中で、いつなにがはじけてもおかしくない、そういう緊張感がたまらなかった。


「少数の誇りを持った人だけでよい」という言葉は、弱い人間を跳ね除けるためじゃなくて、弱い自分がたったひとつ大事にしてる信念を曲げないための、自分を守る為の言葉なのかなあと思ったら、結構悲しかった。
たった一握りの人間でいい、どうか自分が誇りに思ってるものを同じように誇りに思ってくれる同士がいれば、そしてその同士と分かち合えれば、世界からつまはじき物にされたって、それでいいんだって叫ぶ姿は、どこか自分を見ている様で胃がぎりぎりした。
だから、彼らにとってはああすることが正解で、あれが彼らの生き方なんだよなと思う。誰も責めたくない舞台だった。

余談

一緒に観ていた友達が「何を言っていたかは解るんだけど中々感情移入しづらい」と言っていたので、そういう時は自分に置き換えたら良いんだよ、という話をしていた。
結局の所、この話の中で誰が悪かったかというと、その人それぞれ大事にして生きてるものとか、こだわりとかが違って
誰かにとっての「最良案」は、確かに良い方法なのかもしれないけれど、自分からしてみたらどうしても曲げられないこだわりがあったらその案は呑めない。
だからこそこういう事になっちゃったんだよ、おたくみたいだよね。という事で一つ片付いた。
小難しい話とか、自分の生活圏の中で起こり得ない事件だとか、あとは文化が違ったりとかで上手く感情移入が出来なくなってしまった時って、大体は「自分に置き換える」事で解決すると思う。


ドーソンはなんで刑が軽くなるとしても無罪を主張したのか、ジェセップは何を貫きたかったのか。
その人によって、大事にしてることとか、誇りに思ってることとか、事なかれ主義とか、それでも正義を通したいとかの物差しは違うよね、って痛いほど解る。
例える事によってあらすじを解ってくれって事じゃなくて、ニュアンスが通じたらそれでよしというか。


後は、これはあくまで舞台全体を普通に楽しんだ上での余談としてのネタなのだけど。
小西くんがテニミュ1stで不動峰の伊武くん、平埜くんが2ndで同じく不動峰の神尾くんをやっていたので
時を越えた「真剣勝負とはそういうこと」って感じだよねと言っていた。
「有罪だと思ってる」「思ってない」「思ってる」「思ってない」とか
「海兵の縦社会って奴を教えてやるよ!」「理不尽な海兵基地だ…」とか言って楽しんでいた。


切り開き方っていうのは割りと自由で、そういうネタを使うことで作品がより身近になるならわかりやすいネタに置き換えるのは、私は普通にアリだと思う。
勿論それを踏まえた上で、ちゃんと元の世界観に戻して楽しむんだけど、歩み寄らないとまず読み解けないものも多いので、上手いこと突破口開いて歩み寄ってけばもっと楽しくなるものが増えそう~とも思えた1日だった。