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夢は座席で安楽死。

観る→考える→想う→書く。

【舞台】竹林の人々

竹林の人々

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2015年7月30日~8月9日
座・高円寺1

http://shika564.com/chikurin/

劇団鹿殺しの丸尾丸一郎さんが作・演出を手がけるOFFICE SHIKA PRODUCEの最新公演。
鳥越裕貴くんと小澤亮太くんが客演との事で興味深々。
夜でも暑い高円寺からの道のりを進んで、劇場に入り一息つくと、大きな四角い黒い箱がドンと鉛のように置かれていた。

舞台について

座・高円寺の劇場を横いっぱい、天井いっぱいに多くスペースをとり、小道具はぱらぱらと。
中心となる大道具はセンターに携えられた巨大な黒の箱のみ。(ほぼほぼ正方形だったのだけれど、天井部分が少し斜めになっていた)
舞台上に登場した梅竹(鳥越裕貴)が自己紹介と共に、その箱にチョークで絵を描きだしてびっくりした。もしやこれ使い捨てとかなのか?と思っていたら、物語後半で布で拭くシーンがあったため、どうやら転換ごとに誰かが拭いているよう。


中央にある黒い箱が回転する度に舞台の表情が変わり、箱は時には背景に、時には壁に、時には部屋や教室に、時には天井に登り高いステージとして使われていた。
座・高円寺は横が広いので、中央にある黒い箱がそうやって姿を変えている間にも、違和感なく左右で物語が進んでいく。ハイテンポで漫画みたいに話が進んでくな~と思っていた。
コンプレックスにまみれる陰鬱な世界の中と、そのテンポのよさがある種ミスマッチで面白かった。
というより本当にこの箱が凄くて、凄いいいアイディアだな~と思っていたらアフタートークでつっこんで話をしてくれていたので、大変ラッキー。
ラッキーと同時に書きたい感想を大体アフタートークで喋られてしまったので、後述でレポを。


物語としては大阪のとある土地で、兄・松竹(小澤亮太)へのコンプレックスにまみれて闇の中にいる梅竹(鳥越裕貴)があれこれ自分と向き合いながらひとつ成長したり、おごって失敗したり、何かを手放したり、縛り付けられたり。というようなところ。
物語の中で、兄や先輩へのコンプレックスだけでなく家に存在する「イヌ」とよばれる魔物が登場してきて、これが中々の曲者というか、ただの家族がぶつかる話じゃないのが丸尾ワールドだなあという印象だった。
鹿の独特のあの音の効果がとても良くて、おもしろかった。今回は楽器は流石にないのかな~と思ったら、女子陣2人がペットとボーンを持って登場してテンションがあがるあがる。
ひらりと着こなしたセーラー服に対して、照明があたってぎらっと光る金管楽器はまるで武器のようでかっこよかった。改めて鹿の劇団員は楽器が出来るって話がじわじわ面白いここ最近。


期待本丸のの鳥越くんがやはりとてもよかった。
関西弁でのセリフのやりとり、ボケツッコミもなんのその。鹿の独特のテンポに対して早すぎることなく、遅れることもなく、ぴたっとはまってセリフを喋るので丸尾さんとのやり取りが観ていてとても心地がよかった。
鳥越くんの出演作をどれだけ観てるかというと確実に観ていない物の方が多いのだけれど、この人の芝居好きっぷりは尊敬しているし(自分の休みの日に当日券並んででも観たい舞台に行くのは本当に凄いと思っている)、こんなに闇にまみれた役なのに楽しそうでいいな~と思ってしまった。

一方の小澤くんは少し浮いている感じが物語の中でどこか手の届かない存在の松竹や、町村先輩(2役)のようでとてもバランスがよかった。重苦しい世界の中で、彼の存在はふわっと軽く存在していた。
松竹が大好きなチェッカーズの曲に合わせて話が進んでいったり、要所要所で往年のヒットソングがかかるのがとてもよかった。小澤くん、よい歌声。
あとバスケ姿がかっこよすぎるのと、ボールを指一本にのせてまわしてるの、かっこよすぎる。


梅竹が松竹に勝てるかもしれない唯一のものが自転車で~と言うくだりがあるのだが、補助輪をつけた自転車で2人が競い合うシーンがまさに舞台弱虫ペダルのそれであった。
観劇当日に「弱虫ペダル」の次回公演の追加キャストが発表されて、ロビーや座席もざわついていたのだが、タイミングが良すぎて思わず物凄く笑ってしまった。
これはもう完璧にオマージュで、ペダルに出ている鳥越くんが関西弁の役をやっている事に対して、自転車に乗るシーンを入れてこういうオマージュやるのめちゃくちゃ効果的で、大人のわるふざけ感がでていて個人的にはとてもよかった。
なんというか狙いすぎず媚びすぎず「このシーン」がそのものブラックユーモアになってるあの感じ、面白い。


私は兄弟がいないのもあり、上の兄弟や先輩に対するコンプレックスとかは特に持ち合わせたことがなかったので、丸尾さんが描く兄弟像とか家族像に対して感情移入をがっつりする、という事はないのだけれど、だからこそ逆に「いやそんなことないでしょ」ともならないので観やすい印象がある。
自分に兄弟がいて、兄とか姉とかにコンプレックスを持っていてこの舞台を観たらもっと違う感情があるんだろうな~と思うと、悔しいようななんともいえないような。
世の中の舞台なんて大半がそういうものなんだけれど、そういう風に思えるのは面白いよねと言う感じ。


アフタートークについて

言いたいことと聞きたいことが語られたおかげで「それそれ!」となりながらも、自分の感想が大分薄くなりそうだったのでレポで補完。
アフタートークはテレビ東京のプロデューサー兼ディレクターの太田勇さんがゲストで、丸尾さんと2人で話す形式。丸尾さんも太田さんも、どことなく日本人ではないような洋服を着ていて、かわいらしかった。
先日すでに一度観劇した太田さんからいくつか丸尾さんに質問がある!という事でインタビュー形式言うか質問コーナーと言うかそんな感じ。

太田さんは「鹿殺しの舞台だと普遍的なストーリーだけれど、丸尾さんの作られた作品はもう一歩深みに入っていて、その深みの部分が重くて面白い」とおっしゃっていた。
もちろん、普遍的というのは浅いという意味ではなくて、とても広い視野の作品だけれど~というニュアンス。(ご本人も言葉のセレクトに大分迷っていた)


Q.黒のボックスのセットはいつ思いついたのか?
この舞台は完全暗転のシーンが一度もないので、演出をつけている途中で思いついたのか、脚本を書いている途中で思いつくのか。お金もかかっていそう。

A.実は僕は美術から考えていく。
最初は実は舞台美術の人になりたかったのもあり、舞台を作る!というときはこういう世界かな~と美術をイメージしてから作っていくことが多い。だから今回の箱も最初に。
イメージとしては「光と影」だとか「なまり」とかの重くて自分をしばるものだとか。
ベネチアのお寺に行ったときに、変なものが頭上でずっと回っているような装飾があって、そういう何かシンプルだけどひとつ軸になるものがほしいな~と思っていて。
後は今回の作品だと影がくっきり出るもので、かつイメージとして「重い」というのがほしかったのでこの黒のボックスにしました。

最初は取り外す式にするかどうかも悩んだのだけれど、舞台のパーツとして反対側が部屋に出来たりすると転換に使えたりもするしで、壁を取り外し式に変えた。
照明なども、照明さんや美術さんと相談して中に鏡を仕込もうか~なんていって、細かい工夫が色々されてる。……というような事も。


Q.丸尾さんの音の遊び方が凄い。鹿殺しといえば音!というイメージがあるかも。
今回で言うと告白のシーンで事故のSE、松竹が母親に絡むシーンで競馬のファンファーレがなって、普通じゃありえないSEの選び方。
けれどそれが直前直後のセリフで、たとえば告白のシーンなら「まるで出会い頭の事故のように」とあるし、松竹は「暴れ馬」と称されている。そのセリフのおかげでSEが凄い際立っていて面白い。
そのSEの選び方がなんとなくTV番組っぽいな~と思ったのだけれど、何を参考にしてこういうSEを選んでいるのか?

A.特に参考にしているものはない。
僕のイメージではお芝居は音楽と一緒で、楽譜をなぞっていくみたいに、ここはAメロ~次はBメロ~そしてサビで~という流れがある。
その流れの中でうまい具合にテンポをつけるための道具がSE。だから鹿の芝居はわざと大きめにSEを入れたりしている。
ちなみにSEは「こういうシーンで」というと音響さんが色々ネタをふってくれて、そこから選んでいる。


Q.台本を書いてるときにテンポは気にする?今回だと先ほども言ったけれど完全暗転がゼロなので、そういうのを気にして書いたりしているのかな?と。

A.僕は台本は楽譜をなぞるみたいに書いてる。
今回に関しては最初から「暗転ゼロで!」と思って書いていた訳ではなく、書いていた結果、暗転がゼロになった。
ワンシチュエーションのコメディなんかは暗転がないと難しいとよく聞く。
ワンシチュエーションだと、完全暗転にすると仕切りなおしが出来るので確かに効果的な暗転は必要だよな~と。


そろそろ時間が~という事で、ラストは丸尾さんから太田さんへの質問。

Q.テレビ東京さんはわりと柔軟で自由な番組が多いイメージなのだけれど、TV番組の企画はどうやって考えているのか知りたい。

A.テレビ東京は、フジと比べると予算が3分の1で。前に予算を聞いたことがあったんだけれど、本当にそうだった。
だから他の局と比べると派手な事は出来ないし、あまりお金もかけられない。
その中のきまりとして「1行で番組が説明できるもの」を作るようにしている。
たとえば「田舎に泊まろう」だったらそのまま田舎に泊まる番組だし、「なんでも鑑定団」だったらなんでも鑑定する番組だし、みたいな。

丸尾さんから「日常でも1行を探してるんですか?」と追加で質問が入り「ずっといつでも考えてるわけではないけれど、1行で思い浮かぶものはつい探したりはしているかも」との回答。
TVの企画書を先日見せてもらったという丸尾さんいわく、あまりにも企画書が読みやすく解りやすく「芝居の企画書はわざと小難しく書いたり、頭よさそうに書く事が多いから(笑)、あんなに読みやすくてこういうことがやりたい!って解る企画書でびっくりした」とのこと。


そんな辺りで時間切れ。はける際に太田さんが興味深そうにセットに近寄っていて、うらやましかった。
丸尾さんのアフタートークはランドスライドワールドの時も聞いたのだけれど、自分が知らない世界の話とか、思いつかないような事をがんがん聞けるのでとても面白い。
舞台美術から舞台を考える人はたぶんわりといるのだと思うんだけれど、台本を楽譜みたいっていうのなんかとても面白いと思った。
この話をふまえて、去年やたら気に入っていたランドスライドワールドがもっかい観たくなってしまった。(DVDという話ではなく、劇場でみたいといういつものわがままである)