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夢は座席で安楽死。

観る→考える→想う→書く。

【舞台】ウーマン・イン・ブラック

ウーマン・イン・ブラック

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2015年8月7日~8月30日
PARCO劇場

http://www.parco-play.com/web/play/wib2015/


久々のPARCO劇場岡田将生くんと勝村政信さんの二人芝居。
ホラーが苦手な癖に「劇中劇」的な要素があると知ってチケットを取ったらリアルに泣きを見た。
あとPARCO劇場のトイレの石鹸が止まらなくてめちゃくちゃ焦った。(よく見たら手動で止めろと書いてあった。)

ざっくり感想

とりあえず核心に触れるネタバレがないところまで。

勝村さん演じる中年の弁護士アーサー・キップスが、自分が過去に体験した恐ろしい話を家族と親族に洗いざらい話してしまいたい、ということで岡田くん演じる若い俳優サム・デイリーに助けを求めるところから話は始まる。
しかし、そんなアーサーの用意した台本は余りにも分厚く、これをただただ単調に朗読したらゆうに5時間はかかってしまうと呆れるサム。
この話をより一層きちんと観客(家族)に伝えるために、演じる形で伝えよう!と提案をしたサムが、過去のアーサー役を演じ、アーサーはそれぞれの箇所で自分が出会った人々を棒読みでいいから、と演じていくことになり、「アーサー」と「サム」のやり取りと、「アーサーが演じる誰か」と「サムが演じるアーサー」の2層がいったり来たりしながら物語を進めていく。
アーサーとサムのやりとりはいたって和やかで、今日は岡田くんが台本を振り上げたらリアルに顔に当たってしまって「痛っっ」と二人で笑い合うシーンなどもあって、本当にほほえましい。

当初「自分は俳優になりたいわけではないから」と演技を拒んでいたアーサーも、サムとのやり取りの中で次第にのり気になっていき演技の質も上がっていく。
そしてその演技の質が上がるにつれて、物語の重心は過去のおぞましい回想の方へと傾いていく。
そうして話を進めていく間に、すっかり観客である私たちもその世界の中に吸い込まれてしまい、気が付いたときにはジェットコースターの頂点にいて引き返せないような状態。

60分の1幕と、15分間の休憩を挟んだ後の55分の2幕。
1幕が終わった時点で私は既に震えていたのだが、2幕が始まってからの「頼むから早く、早く終わって」という気持ちの高まり、物語の加速は半端なかった。
怖さで言うと5時間くらい2幕を見ていた気持ちにもなるし、スピード間でいうと実際30分くらいしかなかったんじゃ?とも思ってしまった。

感想つらつら

ここから思い切りネタバレあり


なんていうかもうめちゃくちゃ怖かった。
サイコホラー的な精神面でのおどろおどろしさとか、人間の猟奇的な怖さは問題ないというかむしろ好きなのだけれど、ガチのホラーは態勢がないのをすっかり忘れていた。
というより想像の何倍も何十倍も怖かった、色々ナメていた。

映画館と違って劇場は飲食もできないし、何より目の前にいる俳優2人が客席(客は誰もいない劇場という設定)を歩き回って演技をする。
客席にいるお客さん達の心臓の音や、息を飲む音が今にも聞こえてくるかのような空間の中で共有される緊張感。次第に客席から聞こえてくる物音が舞台の仕掛けなのかどうかすらも判断がきかなくなる。

作中で舞台演劇に疎いアーサーがサムに「見えないものをどう表現するのか?」ということで音響効果(役者は無しでリアルに音響ブースの方に向かって話しかけている)が現れるのだけれど
ここのくだりは本当に面白かったし、まるでまったく演劇がわからないアーサーが音響に感動したり、見えないものがそこにあるかのように演じるサムも凄かった。

そんな感じで舞台のセットと音響を巧みに使いながら回想の世界を表現しているのだが、最初は椅子や箱だけだった小道具が、物語が進むにつれて奥行きのある劇場の奥におかれている大道具が姿を表していき、気がつかない内によりリアルな、より生々しいアーサーの記憶の世界へと踏み込んでいく。

作中では暗転により1日の区切りとしていて、日が経つにつれてアーサーの演技へのモチベーションはあがり、演技のスキルも上がっていく。
ここは勝村さんが流石、という感じなのだが沢山のキャラクター達を衣装や仕草で細かく演じ分ける。
けれどその芯に必ず「アーサーが演じている」という部分が存在していて、ふいにアーサーに戻る部分のリアリティが尋常ではなかった。

しかしアーサーとサムが回想の世界に入り込めば入り込むほど、客席にいる私たちもその世界を長く観ることになる。
本来そこにいるはずのない黒い服の女、チカチカと点灯する照明、見えなくなる視界、突然聞こえる物音、電気がついたかと思ったらやっぱり女がいる。
サラウンドで全方位から聞こえてくる音響はビビりの私には刺激が強すぎたというか、2幕は本気でタオルを噛んで泣きながら観ていた。

精神的に追い詰められていくアーサー(を演じているサム)を観ているだけでめちゃくちゃ怖くて、けれど話を最後まで聞かないと「一体何があったのか」が解らない。
だから目を逸らしたくても耳を塞ぎたくてもそれは適わなくて、けれどアーサーの用意した台本が終わりを向かえるにつれ、そこからでもこれでやっと救われるとほっと一息つけたかと思いきや……。


というまあホラーの定番なのだけれど、ぞっとする感じのエンディング。
けれどカーテンコールがきちんと岡田くんと勝村さんに戻っていたので、そこで救われた所はある。
これでカーテンコールなしのパターンだったらちょっと立ち直れなかったかもしれない。(一応カーテンコールはしないでください、というキャッチコピーがついているので。)


しっかし馬車の音が本気で怖すぎて、このSE作った音声さんは道ですれ違ったら容赦しないからなというような気持ちになった。(怒りの矛先がおかしい)
昼公演だったお陰で、PARCO劇場から一歩外に出たらいつもの日本の渋谷の喧騒で本当に助かった。
あと、1番大きいのは私は子供がいないので、現実世界に戻ってきた時にひきずるポイントがなかったのはとても助かった。

観てる最中は物凄く怖くて怖くてたまらなかったのだけれど、劇場から出てしまって一息ついたら美術や演出、2人の演技がとてもよかったなあ~とぼんやり思えて良い観劇だった。
観に行くか悩んでる人がいたらその辺りをぜひぜひ観てもらいたい!とプッシュしたいのだけれど、自分がもう1回観るかと言われたらもう無理……(笑)
2幕で大分白目をむいていたのであっさり目の感想なのだけれど「ぜひ劇場で体感して共感してくれ」という感想が強いかもしれない。
岡田くんと勝村さんの演技がとかくとてもよかったので、そこはみてほしい、私が走って逃げなかったからきっと世の中の大半の人は大丈夫だと思う。


物凄くどうでもよいのだけれど「カルピスソーダ」から岡田くん宛に届いていたスタンド花がめちゃくちゃカルピスソーダみたいでかわいかった。