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夢は座席で安楽死。

観る→考える→想う→書く。

【舞台】黒いハンカチーフ

黒いハンカチーフ

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@新国立劇場中ホール
2015年10月1日~4日

http://le-himawari.co.jp/releases/view/00541

10月1本目の舞台。今月は少し予定がゆるっとなのでド頭にいいものがきたかも。
演目変更やらなんやらで少しバタついた今公演。無事に幕が開いて、無事に楽しかった。
作中で使用されるお線香の香りが、今も鼻の奥に残っている。

舞台について

「詐欺師」がメインの話なので、何が嘘で何が嘘じゃないやら…。
と、思いつつもまあ観ていてわりと「こうだろうな」とわかりやすい記号が転がっていて、どきどきハラハラというよりも「そうなるだろうな」に向かっていく物語を観ていくのが楽しい感じだった。
若手俳優勢も、男性陣も女性陣もとっても上手くて、新国立の空気感によくマッチしていて居心地がよかった。
なんだろう、確かにここは新国立の中ホールなのだけれど、要所要所で紀伊国屋ホールみたいなこぢんまりさを感じて、でも新国立で…みたいな不思議な気持ちにさせられた。

この舞台は私にとっては「客席と舞台上に一線を引いてる」という感覚で、だからもう最前列の目と鼻の先のステージの上からは「別の世界」になっている。
目の前で別の世界が作りこまれていて、それをただただ「お芝居」として認識しながら観つづけるのが、吸い込まれすぎず気楽でよかった。
ミニチュアのセットを外から見ているような、何か別の世界を覗き込んでいるような、そんな認識。
あとはキャストの表情がころころ変わって「誰が嘘をついているのか解らない」のが面白い。
何が一番面白いって、これはお芝居だから既にそもそもの前提として「嘘をついている」。でもその嘘をついている世界の中で色んな人たちが更に嘘をついているから、その嘘を追っていくうちにわくわくさせられてたまらない。
一番最後の展開には「そうきたか!」となったのだけれど、皆が幸せで楽しくぽかぽか終わる、観ていて気持ちの良い舞台だった。
良い意味で引きずらない。あ~たのしかった~!で、ストンと終われるのは、きっと別の世界として線が引かれているからなんだろうな~。
そんな感じで「深い事を考える舞台」ではなく「物語を楽しむお芝居」だったので感想もさらっとめ。

そして河原雅彦演出はもしかして前から観ると少し勿体無いように感じた。
良い意味で映像のようなトリミングの仕方をするというか、引きでみたときに本来のパーツが綺麗に見えるというか、そういう印象がある。
新国立中ホールの盆と映像装置をしっかりと使った演出は、引きでもう一度観てみたかったな~と思わされて悔しかった。
特にオープニングが映像使って、かつ盆が回ってという仕組みだったのであればっかりは1階後方か2階最前のセンターから見たい気持ちにさせられた。
あのオープニングはすっごいよかったな~。年末にライチの演出が河原さんなのでとても楽しみ。

あとは美術がよかった。とってもお金かかってるのではないだろうか。
色合いも作りこみも素敵で、セットも小物もどれもかわいいものばかり。
時代風景を映し出すアイテムが沢山沢山揃っていて、それだけでみていてわくわくした。

役者さんについてはもう皆が良すぎて上手い事まとめられないので一旦若手勢だけに絞る。と。
桑野くんは上手い子だよな~と思っているのだけれど、こういうタイプの舞台で観るのは始めてて、このキャストの中に囲まれるとまだ伸びしろがあるな~と思わされて面白かった。
(語弊がないように書くと今回の桑野くんもとてもよかった。うえでさらに、の話。)
これからどんどん上がっていくのだろうなと思うと楽しみ。一応1人2役の扱いになるのかな?
あとは松田凌くんは私が思っているより遥かに出番が少なくてびっくりした。
今回、7月末のニュースで作品が変更になったのだけれど、その前は確か矢崎くんと対談とかしていたような気がするし、クレジット的にももっと出番があるのかと思っていたら思ったよりあっさりで、松田くんお目当てで行った人は大変なのでは…と少し思ってしまった。

矢崎広と橋本淳について

この2人が共演しているのを観たのは2013年の「る・フェア」で、義経と弁慶の主従関係の役をしていた。
2013年の私は「橋本淳がるひま舞台に出るとか大丈夫なのか」という気持ちと、その他もろもろの色々な気持ちで毎日胃が苦しくて夜もろくに眠れない日々を送っていたのだけれど、結果的に物凄い楽しんで、そして何よりこの2人の主従の関係が好きだった。
なんで胃が痛かったのかとか、るひま舞台にかける私の気持ちとかについては話すと長くなるので一旦割愛するのだけれども。
この2人の演技のやり取りがよいなあ~と思っていたので、今回またこうして観る事が出来て嬉しかった。

矢崎くんは若手の子達が沢山出ているものだとそういうキャラ的な役に徹しているし、今回みたいな「新国立ですよ!」みたいな舞台だとその顔に変わる。
逆に橋本くんはどこにいっても自分のスタンスを貫いていて、その上でカメレオン俳優をしているので、そっちもそっちですごい。
一見すると間逆のスタンスを取っているようなのだけれど、自身の色素が薄くて「色んなところに入り込める」という点では近いのかなと思った。

今回、急に演目が変わった事と、急に橋本くんがキャスティングされたことによって、私の胃がまた大分痛くなっていた部分はあったのだけれど
とはいえ主演は矢崎くんだし、周りを固めているメンツも彼がのびのびやるだろうなという謎の自信があったのだが、やっぱりちょっとビビっていた。
(橋本くんは稽古期間をきちっと取りたいタイプという認識で、わりと急ピッチのものだとピリっとしているイメージがあるゆえのはなし。)

ただ、私が観劇する前に…というか初日にこんなやりとりがTwitterでおきていて物凄くびっくりした。



※矢崎くんも追求しているがわりと珍しい案件


この時点で大分私のビビりは安心に変わっていたのでリラックスして観劇に挑めたのだけれど(何をそんなにビビる必要があるのかというのだが)2人のやり取りが多いお芝居だったので、とっても満足して帰宅してきた。
それこそ「る・フェア」で2人が演じていた役は2人とも命を落としてしまう。
けれどそんな役をやっていた2人が笑顔でけらけら少年みたいに笑いながらビールを飲んだり、悪巧みをしたり、騙しあったり、そんな姿に何を重ねていたわけでもないのだけれど、2013年に明治座においてきた何かの気持ちをやっと2015年の新国立劇場で回収できた気がした。

あとはそんな役の投影をさておきとして、普通にこの2人の演技のバランスがよい。相性がよい。
なんだろう声のトーンなのか、間の取り方なのか、たたずまいなのかわからないのだけれど、観ていて物凄く自然で心地が良かった。
矢崎くんは今回自分が予想していたより遥かに男前というかがっしり?しっかり?した役作りをしていてびっくり。もうちょっと軽やかな演技で来るかな~と予想していたので、自分が観た事のない矢崎広だった。どんどんのびるなあ。
橋本くんはまた痩せたのか~?と思うくらいに相変わらず頭身がおかしくて、最後の挨拶で並んでいても一人頭が飛び出てて不思議だった。
今回「新国立劇場で初めて悪い橋本淳を観る」という経験をしたのだけれど*1、なんだかそれが途端にとっても彼を大人に見せてびっくりした。
とはいえ最後の最後のシーンで舌を出して笑うシーンを見たら、たまらなく少年具合を思い出してどきどきした。暗転しながらのあの表情は、今日見た橋本くんの中で一番よい顔をしていたと思う。
あと橋本くんの京都弁がすごいよかったのを忘れないようにメモしておきたい。

ここ2人の共演があったらまた是非観に行きたいな~というところ。
いや本当に思ったより橋本くんの出番が多くてびっくりしたのもあるのだけれど、矢崎くんと橋本くんのやり取りがこんなに沢山観られるとは思わずで、余計にびっくりしたり嬉しくなったりした公演だった。

*1:新国立劇場主催の舞台で彼は幼い、頼りない、優しいみたいな役どころが多い