夢は座席で安楽死。

観る→考える→想う→書く。

【舞台】柿喰う客フェスティバル2016「いまさらキスシーン」

柿喰う客フェスティバル2016「いまさらキスシーン」

f:id:ka_ri_ng:20160605224256j:plain:w300
@花まる学習会王子小劇場
2016年6月2日~6月26日

https://kaki-kuu-kyaku.com/

柿フェス2作品目、というよりこれもう殆ど同時初日の1作品目に近い。
柿喰う客の看板怪優・玉置玲央のセーラー服での30分間ガチンコ1人芝居。楽しみすぎてとりあえず戯曲を死ぬほど読んだ。すごい、戯曲読んでからの観劇とか久々だ。

前置き

前置きが長くなりそうだったのでこちらにもってくる。
私と中屋敷演出の出会いは度々書いてる気もするのだけれど、2013年の「飛龍伝」で、実はそれまであんまり中屋敷さんが得意じゃなかった…という自分の心象を180度ひっくり返してその場で土下座する勢いだったというどうでもいい小話はさておきとして。
その時に玲央さんの芝居とも出会ったわけでして。そんでもって圧倒的に「怪優・玉置玲央」にも心奪われる次第。
それから色々なお芝居を観てみたりして、どの作品も好きなのだけれど、私は多分「中屋敷演出の玉置玲央」が凄く好きなんだなと日々実感し続けていて、なのでそれに該当する作品が上演される時はなるべく観る様にしている。

中屋敷さんと玲央さんの出会いの馴れ初め(?)が私はとても好きで、ざっくり言うと「お互い自分以上の変態がいるとは思わず生きていたけど、共通の知人に紹介されて出会ったら自分より変態だった」みたいな話なのだけれど、なんかもうそれがすごく好きで好きでたまらなくて仕方がなくて。
2013年に好きになった身としては「中屋敷演出の玉置1人芝居があった」という事を知ったところで見る術はなし、いろんなレポとか写真とか発掘すればするほど観たくなる。

と、そしたら今回の柿フェスで再演します!と発表があり1月私inLOFT、大絶叫。
その後の稽古場公開で生で稽古も見られ、戯曲もWEB上で配信されて、モチベ上がりまくりの状態、今にも国道4号線を走り出しかねない勢いで、元気に初日を迎えたというここまでのあらすじ。

感想ぱらぱら

部活!勉強!そして恋愛!あらゆるものに心奪われながら
天才女子高生は今日もひとり、国道4号線をひた走る!
稀代の名優・玉置玲央が魂をささげる爆走系青春喜悲劇!

この作品は三御堂島ひより(みみどうしまひより)の高校生活3年間を30分間で、玉置玲央が1人で演じるというもの。
初回公演を見たらなんかもうよくわからないんだけど鈍器で頭をドーーーン!と殴られた気持ちになって、かつやっとこの作品が観られたということで喜びなのか感動なのか良くわからないけどとりあえず泣いてみた。
というわけで控えめに言っても「サイコー」しかなかったのでここで記事を終わらせてもいいレベル。
なんだろう、やっぱり演劇の変態が作って、演劇の変態が演じる30分間の3年間だった。
これは口でとやかく言うものじゃなくて、体感するもので、それをずっとずっと体感したかった身としては、体感する機会が訪れたと言うことがどんなに幸せか……みたいなチープな言葉しか出てこない。

この文章を書いている時点では初日1回と2日目2回の3公演を観劇しているのだけれど、まったくおなじひよりちゃんが存在していないのがすごかった。というより3公演ともまったく違う舞台を観ているみたいだった。
何がどう違うというのをうまく言葉には出来なくて、それが歯がゆいのだけれど、少なからず私が観た3回のいまさらキスシーンの三御堂島ひよりは全部違う人で、幕が開くたび(幕ないけど)に新しくひよりちゃんが生まれては消えていくイメージだった。
個人的には4日19時公演のひよりちゃんが一番かわいいというか美しくて、そのひよりちゃんが語るトオル先輩が一番イケメンのようにみえた。なんだろう、凄い不思議、体感でしかないんだけれど。
自分が大好きなひよりちゃんもいれば、ちょっとかわいそうなひよりちゃんもいて、かと思ったらすっごいかわいいひよりちゃんもいる。
最初のたった一音の「せ」だけで、あっ違う、これ違う、何が違うとかはいえないんだけど空気が全然違う、というような肌感の話になってしまって、語彙力の衰えを感じてしまってどうしようもないのだけれど、たった一音で異なる世界を構築する玲央さんは化け物の変態だと思ったし、この作品を玲央さんにやらせようと思った中屋敷さんも化け物の変態だと思った。
この2人が出会ってくれて、すばらしい作品が世に放たれている事に感謝しすぎて胸の前で十字を切った。


私、女子高生の頃何してたっけ、勉強、部活、恋愛、どれが主軸だったっけ、って思ったけれど、そうだった全部疎かにしていたんだった。どれかを疎かとかじゃなくて、潔く全部疎かにしていた。
高校生の自分は演劇を「観る」ためにアルバイトをしていたし、アルバイトをして舞台を観るだけの生活をするために「高校生」という身分が必要だったので、便宜上高校生をやっていた……という今とあんまりなにも変わらない生活を送っていた気がする。
ただ圧倒的に友達がいなかったし、今の5億倍くらい尖がっていたし、人付き合いが下手だった。
から、この勉強部活恋愛すべてにシフトチェンジして悔いのない青春ライフを送るひよりちゃんの姿を見て「ま、まぶしい~!」と思うことは一切なく、「ああそういうルートもありかあ」みたいな感じだった。もう、あまりにも価値観が違いすぎて、それが刺さるとかのレベルですらなく、ただひたすらに他人事だった。
あと私は舞台を観ると大体作中に出てくる食品を食べたくなるというサブリミナルにかかるのだけれど、本作食品が出てくるっちゃ出てくるけどまったく逆の効果がかかっているので、なんだろうものを食べる描写とか、物がおいしそうな描写がないのって私の中だと「ものがたり」という感じが凄いある。なんだろうこの1ミリも上手く説明できてない感じ。
私は頭がよい人間ではないし、評論家でもないので本当にただただ自分の感情を言葉にして綴ることしか出来ないのだけれど、食べ物がおいしそうな舞台ってなんか「生きてる」って感じがするんだよね。


音の話。
個人的に「ヤマピーとウエンツとモコミチとカメナシ君をミキサーでギュギューンってやったようなイケメン男子がスタンドバイミー。」っていうセリフがとにかく好きすぎて、実際音で耳にしたら余計に好きすぎてここだけなんか音声配信とかしてくれよという気持ちでは好き。
全体的に玲央さんんの1人芝居だから玲央さんの独特なイントネーションとかテンポでの遊びが入っているのだけれど、本当に観ていても聞いていても心地が良い。わかりやすいところを挙げると「がしかし」の「が」の前に小さい「ん」が入ってたりとか、「2年だよ」のイントネーションとか。
なんだろう、ビジュアルや作品としては演劇を体感しているのだけれど、音としては音楽を聞いているみたいな感覚に近いのかもしれない。
落語のカセットテープみたいに音源だけにして外で聞いてももしかしたら楽しいのでは?という何か新しい可能性をちょっと考えてみたりしてしまう。

今回は以前までの公演に比べてかなりMやSEに頼っている(よい意味で)、という事を話していたのだけれど、その音楽がまたとてもよいこととてもよいこと。
個人的にはひよりちゃんの口上が終わった後の…あれはM1だろうか、あの楽曲が好きで、もうなんなら楽曲を聞くために王子に来てもいいんじゃないか!?みたいな気持ちにすらなる。
あとは照明が本当に素晴らしかった。勿論照明は照明さんが担当されていて人力で動いているのだけれど、玲央さんの呼吸や動き、毎公演かわるあれこれにあわせて、きちんとタイミングがかわる。
それがなんだろう、劇場ごと玲央さんみたいな、玲央さんが劇場みたいな、生きる演劇みたいな、演劇の擬人化みたいな。そういう気持ちにさせられて、こんなに「お芝居」の中でのびのびと生きてる人って他にいるのかな?いやいるんだけど、今この瞬間はどうでもいいや!やばいわ!というやっぱり語彙力の無い結末にたどり着いてしまう。
毎公演色々変わる上に、席も変われば見方も変わる、受け取り方も変わる。後ろの席のほうが意外とお尻が良く見えるし(何この感想)、奥の壁に近い席だとMにあわせて壁がびりびり共鳴するのと体感できる。すごい。お芝居って生きてるのね。
あとは玲央さんが第四の壁をぶち壊して、客席に向かって遊びに出るのもとっても楽しい。なんだろう、こんなに楽しくお芝居する人をみることが出来て、体感が出来て、やっぱり幸せなんだなあと再び涙がちょっと流れる。


このお芝居は玲央さんのライフワークみたいなものらしく、少なくとも80歳になっても続けて行きたい!と言っていたのであと50年生きて80歳の玲央さんのいまさらキスシーンが観られるように私も元気に生きなきゃなあと思った。
だがしかし、玉置玲央30代最初のいまさらキスシーンと、30代最初の玉置玲央のTバックと綺麗なお尻は今しか観られない訳で。私がギリギリと歯を食いしばって待った3年とちょっとと同じように、次の再演がいつなのかがわからないので、どうかこの演劇による殴打みたいなものを体感して貰えたらすっごく嬉しいな~と思ってとりあえずいまさらキスシーンをメインでごり押ししまくってる日々。
観ないと損するよ!とかじゃないし、観たら絶対面白いよ!とかはない。感想は十人十色なので。ただ私は自然と涙が出るレベルにこの作品を欲していて、今観る事が出来て幸せ!と思っているので、自分がそう思ってる作品を1人でも多くの方に観て貰って、面白いでもつまらないでもなんでもいいから自分とは別の角度の感想が観られたら私がただ幸せだっていうだけの話でして。
結局は全部自分のための行為なんだけれども、国道4号線を走る代わりに私はSNSでダイレクトマーケティングをひたすらにひたすらにするわけなのだった。
残りをまだ観てない時点で断定するのは大分頭が悪いけれど、やっぱりそれでも私が今回の柿フェスで沢山の人に観てくれ!観てくれ!と自発的に言うのはこの「いまさらキスシーン」が一番多いのではないのかなあ。
こちらは1日パス日を除けば6月9日~12日の間と18日、24日に各日1公演ずつの残り6公演。残り6人のひよりちゃん、誰か1人だけでもいいので、よかったら出会ってきてみて欲しい。


ところで、駅と劇場の間にある「北とぴあ」に長崎平和像があるのだけれど、つまりあれはそういう事なんだろうか。
あと「サバンナの掟」の出演している三永くんが載せてる2人のこの写真がなんかよくわからないけどすっごく好きだったからいつでもみられるように貼っておく。

なんだろう、中屋敷さんと玲央さんの関係性を上手く言葉に表せないけど、私としては2人の関係性としてこれ!というなら「いまさらキスシーン」なんじゃないのかなみたいな。たまらなく好き。