夢は座席で安楽死。

観る→考える→想う→書く。

【舞台】女体シェイクスピア008『艶情☆夏の夜の夢』

女体シェイクスピア008『艶情☆夏の夜の夢』

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2016年8月4日~8月14日
@吉祥寺シアター
https://kaki-kuu-kyaku.com/

夏だ!女体だ!夏の夜の夢だ!!!!
ダッタン人の矢よりも早く、れっつら吉祥寺シアターへ。
シェイクスピアを観る予定が、客席に座るとお祭りの会場だった。

感想ぱらぱら

上述の通りに、客席に入るととても個性的なセットが広がっていた。
八百屋+円形のステージで、円形の中はまるで箱庭のような芝生、そして天井からは吊るされた提灯の数々。あれっ?私今から観るのシェイクスピアの劇で合ってるよね?と頭をひねらせる。
開演の5分ほど前から一風変わった風貌のパック役千葉さんが舞台に登場し、定刻よりスタート。楽曲提供のDE DE MOUSEさんのテクノでポップな今時の音楽に合わせて、かわいらしい浴衣を着た出演者達が順番に舞台上へと登場してくる。
今まで柿でこんなにポップで優しい音楽がかかっているのを私は聞いた事が無かったので(自分が知る前にあったかもしれない)、いつもとのギャップも凄かったし、出演者が全員浴衣というシェイクスピアからかけ離れているギャップも凄かった。

通例の女体の通りに、話はそのままシェイクスピアの「夏の夜の夢」を中屋敷さんがアレンジしたまま進んでいく。「夏の夜の夢」は元々好きな作品なので、まさか中屋敷演出で観られるとは!というので発表があった時からそわそわしていたのだけれど、とっても楽しかった。
テンポ感というか疾走感がたまらなくて、それこそまるで音楽のライブに来ているみたいな気持ちになりながら、90分もしないくらいの上演時間だった。
シェイクスピアを90分切って上演する中屋敷さん意味わかんないなと思っていたら近くにいたお客さんも同じような事を言っていた、だよね。

出演者陣は劇団から5名、客演が3名の計8名。
8名の女優陣は千葉さんを除き全員が複数の役を掛け持ちしており、シーンが変わるごとにまったく違う姿、声色、立ち振る舞いで舞台をにぎやかす。たまに物凄い早替えがあって「えっ!?もう着替えたの!?」となるくらい。
中屋敷さん曰く「夏フェスに来ているおばさま」の様な風貌の千葉さんのみが和装にならず、早替えもなく、マイペースにゆっくりおっとり喋っているのがとても印象的だった。
従来の「夏の夜の夢」ならば、妖精パックが誰よりも早く(地球1周40分)、すばしっこくてやんちゃ、というイメージなのだが、今回のこの「艶情☆夏の夜の夢」だとどちらかというと逆で、それ以外の7名がせかせか忙しく慌しく、いわゆるあの柿のリズムに合わせて喋ったり動いたりしている所に、千葉さんのパックだけがゆっくりそのペースに乗っていない、というのが面白くて好きだった。
千葉さんの「ダッタン人の矢よりも早く!」が聞けるのは女体シェイクスピアだけ!というレベルに、こういうパックの解釈もありか~すごいな~と思ってしまった。
千葉パックからはじまり、千葉パックで終わるのだが、1ミリも感情移入しないどこか蚊帳の外の傍観者なのも最高によろしかった。
客演チーム残りの岡本あずささん&岡田あがささんコンビ。最早色んな人が混乱する名前の羅列に私も最初混乱してましたすいません。とてつもなく美の暴力だった。
直接の絡みは少ないものの、この作品の中で私が一番好きかもしれない(まだ定まってないので”かも”)、岡本ティターニアを妖精の部下チームが守るシーン。
3名の後輩を持って蛾の妖精を演じるあがささんの空回りヤンキーが堪らなく大好きで、かつティターニアを「姐さん!」と呼ぶのもめちゃくちゃ好きだった。
この2人は男役と女役をくるくる入れ替わって演じているのだけれどどちらもサマになりすぎて女体のマジックは凄いなあと思った。2人ともスタイルがよすぎて怖い。

柿フェスに引き続き早くも2作品目の長尾ちゃん&福井なっちゃんの新劇団員コンビ、今回はメインの恋人同士、ライサンダーとハーミア役。
やはりやりよる!と思いながらも、このメンツの中にいると色んな意味での「フレッシュさ」を感じられてよかった。決してそれが悪いという事ではないし、まだまだ伸びしろがあるし、これからが楽しみだな~と思わされる。
いつか長尾ちゃんがガッツリ色気のある女役をやって、福井なっちゃんが男前な男性役をやる時とかが来るのだろうか。楽しみ楽しみ。
個人的に福井ハーミアがブチギレる時の表情と声が好き過ぎて繰り返し見ていたい。あと長尾ハーミアは普通にイケメンすぎて恋人にしたい。

深谷さんの女体復活で90分がっつり出演を観る事が出来て、よくわからないけど背筋がぞくっとしてしまい、初日ちょっと涙ぐんでしまった。
前回の柿フェスでも演技をする姿は観られたのだけれど、なんだろう、「七味さんと並んでる深谷さん」みたいなものにも何か感動があったし、あのイキイキと舞台の中心で誰よりも激しく楽しそうに「吼える」深谷さんの姿が、大好きで堪らない。
あと、舞台の上であんなにも生きていて、舞台の上にいるために生きているみたいな深谷さんが大好きで、それと同時に「前世の罰で舞台上にいるのか」みたいなテンションをアフタートークなどで見せる永島敬三さんも大好きなので改めてこの2人が夫婦なんだよなあと思うと凄い世の中は面白いなと思ってしまった。年末の本公演で2人が共演するのが凄い楽しみだな~わくわく。
深谷ボトムが最後に吼えるあのシーンがかなり好きで、でもどことなく少年誌の打ち切りされた漫画感があるので、観る度に心の中で「俺達の戦いはまだこれからだ!」みたいな事を思ってしまう。
中屋敷さんがその先をわざと描いていないと言っていたのもあるので、そういうのも合わせてそう思わせるのかな~。あの独特な感じは是非観て頂きたい。

いつでも安心七味さん、は、もう、男性役も女性役もおじさん役も切り分けが完璧だしどれもすばらしい!といいたい所なのだけれど個人的にはオーベロンが最高に好きだった。
何が好きってまずビジュアルが好きすぎる。よさこいの衣装が似合いすぎて、髪形も好き過ぎて(七味さんは刈り上げすぎてその内全ての髪の毛がなくなるのではないか不安だ)、もしかして七味さん酔っ払って舞台上に立ってないか?と思わせるレベルのあのテンションも好きで、「舞台写真欲しい」となっていた。
最初はいかついオーベロンが、恋の話になると段々七味さんっぽくなってくるのも面白いし、ヒポリタとの180度違う姿と声色も見もの。
凄く余談なのだが、普段私が勧める舞台をほぼ観に来ない上に大体趣味が合わない母親が観に来てくれたのだけれど、普通にめちゃくちゃ楽しんでいて、七味さんが最高すぎるから次の本公演も行きたい!詳細出たら教えて!と言ってくれてなんだろう、物凄くどこから目線かわからないけどガッツポーズをしてしまった。

今回の完全ダークホース、葉丸へレナ。いやあ、もう、最高でした。
私葉丸さんの事こんなに好きだったっけというくらい葉丸へレナから目が離せなくて、葉丸へレナが可哀想で、かわいくて、大好きだった。だったというか、好き。
普通だったら気持ち悪いと思ってしまうようなセリフや行動もどこか全て愛らしくていじらしい、コミカルだけどシリアスで、かわいいのに全力で舞台上で暴れ狂うさまは本当に素晴らしかった。葉丸さんは柿の中では「最年少かわいがられいじられキャラ」みたいな印象があったのだけれど、気がつくとすっかりお姉さんで、先輩の風貌ばりばりで、葉丸へレナが舞台上にいるととてつもなくわくわくさせられた。ダメだうまく日本語が構築できない。とりあえず凄く岡田ディミートリアスのことを嫌いになりそうだったというか、最早加えてライサンダーもハーミアも嫌いになりそうだったレベルには葉丸へレナが好きだった。

ざくっとそんな所だろうか。吉祥寺シアターのあの落ちそうなくらいの傾斜が大好きなので、前方から観ても後方から観ても楽しめるのは素晴らしかった。個人的には後方のセンターから観たのが舞台美術とかせせこましく動く人間達のさまとかがわかりやすくて好きだったかもしれない。
女体の…というか中屋敷さんの喜劇を観るのは初めてで、そして次がいつになるかがわからないのでもう少しくらい堪能しておけたらなあと思っている。

偽りの恋と本当の幸せについて

こっから完璧に余談で、ディミートリアスとヘレナの話について。
「夏の夜の夢」では、2組のカップルが存在していて、片方が「ライサンダー(男)とハーミア(女)」、もう片方が「ディミートリアス(男)とヘレナ(女)」。
ディミートリアスとヘレナは元々好き合っていたのだけれど、作品の時間軸の時点では「ディミートリアスがハーミアを好きになっていて、かつ許婚にされている」という状態。
そしてそれが色々あって妖精の魔法にかかり、ディミートリアスがヘレナの事を好きになって全員めでたくハッピーエンド!となるわけなのだが、私はここが凄く気に入っていなくて(これは中屋敷版がというわけではなくて原作時点で凄く気になってる)。

ハーミアはライサンダーが好きで、かつここが両思いなので、最終的にお邪魔虫になっているディミートリアスが消えて結婚できる形になるのはとってもハッピーエンドだし、是非是非幸せになって欲しいと思う。
けれどディミートリアスはどうなんだろうか。現状の心としてはハーミアを愛していて、一生懸命追い掛け回している、それが例え主人公の視点からしたら邪魔者だとしても、彼が今好きなのはハーミアなので、それを無理やり本心ではない気持ちにさせるのは、ハッピーエンドなのだろうか。それはヘレナも一緒の事で。
ヘレナはディミートリアスの事を愛していて、自分に振り返ってくれるのを待っている。現代にしたら大分重いセリフの数々を吐き捨てて、現代日本だったら訴えられても仕方がないレベルの付きまといをしているが、それでも純粋に一心不乱に愛している。
妖精の王オーベロンはそんなヘレナを「可哀想」といってディミートリアスと結ばれるようにしむけるが、ディミートリアスが最終的にヘレナの事を愛するようになっているのは、妖精の力が働いたままになっている。
これって結局偽りじゃん、と私は思うわけで。偽りの愛で幸せになってる2人は、結局心の底から幸せなのかどうかと問われたら、タネと仕掛けを知ってしまっている私からしたら「それは違くないか」となってしまう。
仮に妖精の力を借りつつ、なんやかんやあった結果ディミートリアスがヘレナを愛する事に気持ちを切り替えたならばウルトラハッピーエンドだけども、そうじゃないのでどうにもモヤっとしたものが残る。
とはいえ当のディミートリアスにかかった魔法は解けることがないし、ヘレナはその真実に気がつく事がないので、嘘も嘘だと一生解らなければ幸せなのだろうか?とか考えてしまった。凄く難しいし、ここめちゃくちゃ深いテーマだと思ってしまった。
これは中屋敷さん自身も気になってるところらしくアフトでも「ディミートリアスはおかしくなったままですからね」みたいな事を言っていたので、ちょっとその辺り詳しく解釈聞かせてください!!!という感じ。

世の中の人的には「残酷な真実」と「偽りの幸せ(ただし魔法は解けない)」はどちらの方が幸せなのか気になるところだったりする。
楽しい舞台を観た後も、結局こういう事をウダウダ考えてるの、我ながら難儀だなとこの夏も思った。