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夢は座席で安楽死。

観る→考える→想う→書く。

【舞台】リサウンド~響奏曲~

舞台 【※】ネタバレ

リサウンド~響奏曲~

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@CBGKシブゲキ!!
2016年9月2日~18日

http://amuse-gekipre.com/

劇団プレステージ第11回本公演、久々の新作本公演は大分人数が出払っていた。
おなじみになったほさかさんが初めて脚本を担当する劇団プレステージは、なんとなく求めていたものに久々に出会えた感があった。

感想ぱらぱら

今回は本公演だが、加藤くん&風間くんのキンキー組、「娼年」に出演中の猪塚くん、「DISGRACED」に出演中の平埜くん、またドリフェス組の太田くん&石原くんが出演していない。
プレステージの華形担当……というと語弊があるかもしれないが、少なからず総選挙をやったら上位をシメるメンツがガサッといないのでどうなるやら?と思っていたところ(しかも本人達も似たような事をパンフで話していた)、個人的にはめちゃくちゃバランスがよかった。
そもそも「シブゲキに来たからって毎回本公演に劇団員全員出さなくてもいいじゃん」派だったので、まさにそれが願ったり叶ったりな状態というか。90分間の上演時間の中で人間関係がストンと脳の中に入りやすく、また無駄な情報も無かったので純粋に楽しめた。

主人公は三兄弟末っ子役の大村くん、バンドマンの長男役に今井くん、教師になる夢を諦めて社畜サラリーマンとして働く次男役に長尾くん。
大村くんの高校時代の同級生役に株元くんと城筑くんのコンビ、今井くんのバンド仲間役に高頭さん、向野さん、坂田くん。
その他、大村くんの高校の担任役に高橋くん、大学の同級生役に春日くん、園田くん、岩田くん、小池くん。今井くんたちのバンドが通うバーのマスター役に原田くん、といった陣形。
株元くんと城筑くんという旗揚げ当初はいなかったメンバーが、大村くんという古参メンバーを外の世界に引っ張っていくのも、当時から一緒にいた今井くんの魅力を知る事になるという配役も、たまたまだとは思うけれどメタ的な意味でも好きだったかも。

そんでもって今回、なんと、女役がいない。
勿論この作品世界観の中に女子はいるのだが、そこだけうま~~く切り取って、無理に誰かが女性役を演じていないので(別にいつもも無理にとは言わないが)、視覚情報としてはものすごくスムーズに入り込めた。
あと今回は5分前担当の原田くんと作中の原田くんの役どころが一緒、Hagt?の時と同じ感じかな。より物語が固まる感じがあって私はこっちの方が好きかも~と今さら自覚する。
結局それほさか演出が好きなのでは?というのを実感させられてしまった気がして何かが悔しい。


今回の作品は、大村くん演じる奏(そう)が突発性難聴にかかり、世界から音を失う事から物語がスタートする。
順風満帆に見せかけた世界は実は嘘ばかりでだんだんと歪みが入っていく様がほさかさんらしくて、「ああすっごいモヤモヤする」と思った(褒め言葉)し、今回出演のメンバーがいい感じに体現していたのが大変すごくとても好きだった。
あとは細かいディティールかもしれないけれど、リアルな人間関係がすっごいむかついた。どちらかというと主要人物ではないが、奏の大学の同級生チームが、今の日本の現代社会にしてはいい奴ら過ぎるな~物語の中みたい!と思っていたら、結局の所、耳が聞こえない奏を利用する為に近づいていたクソ野郎共たちだとわかった瞬間にほさかさんに心の中でスタオベしかかった。
いやーもう、なんだ、あの本性出した時の小池くんのクソ野郎っぷりは顔面から一発思い切りぶん殴りたいくらいのウザさだったので危うく本人の事を凄い嫌いになりそうなくらい良かった。もう褒めてるんだか貶してるんだかわかんないけど、褒めてる。

私自身がたまにストレスで言葉を喋れなくなるという現代人あるあるみたいな持病を持っているのだけれど、作中で語られている通りに昨日まで当たり前に出来ていた事が出来なくなる恐怖というのは尋常ではない。
特に目、耳、声の「情報伝達」及び「コミュニケーション」に必要な箇所がクラッシュするとそれだけで更に絶望が生まれる。
先天的に失っていた人と、後天的に失ってしまった人の辛さは比べるものではないし、比べようとも思わないのだけれど、「それまで極当たり前に機能していた箇所」がある日突然機能を停止するということは、やっぱりとっても怖い。
それに対して、人ってやっぱり何故か「大丈夫」って言ってしまうのがとても不思議で。絶対大丈夫じゃないのに、「大丈夫」って言ってへらへら笑ってないと本当に倒れこんでしまいたくなるというか、そのまま消えてなくなってしまいそうな恐怖に襲われるもので。なんかその感じが上手い事表現されてて、余計にメンタルにざくざく来てしまった。大村くんの表情の作り方が怖すぎてびっくりした。
本当はそういう時って「大丈夫じゃないよ、つらいよ、苦しいよ」って言ってどん底まで落ちないと這い上がって来れなかったりするから、難しい。

ガラスを引っかくような何かを遮る音や、ピアノの不協和音の演出が死ぬほどイライラするというか、精神をすり減らす所があって、ほさかさんは本当に人にじわじわダメージを与えるのが上手くて観ていてしんどいなあ(好き)と思ってしまった。
音の効果はこんなにも人間のメンタル面にダメージを与えるのかと謎の関心をしてしまった。
後は「大丈夫」と繰り返し言う人間の脆さだとか、その笑顔の苦しそうなさまを引き出すのが本当にお上手で、当初「ほさかさんと劇団プレステージって持ち物が真逆では?」とか思っていたけど、何回も公演を重ねてる内に意外とこれ相性いいかもしんない、次も楽しみだなと思うようになってる。
次男の楽(がく)が、奏が日常会話用のスケッチブックをめくり続けても「大丈夫」しか書いていないあのシーンが本当に怖くてたまらなかった。
というかほさかさんは大村くんを追い詰めるのが好きなのだろうか(語弊しかない)。
だからある種そういうメンタルが弱っている人間に対しても手を差し伸べてくれるような、何かを失った人間にも、どうしようもないバカでも、一生懸命自分なりに生きてていいんだな、大丈夫なんだなと改めて思わされて、励まされた気がした。


そして「なんで劇団プレステージは歌うんだ」案件を払拭する今回の公演は、「作中で歌われるべくして歌われるための歌」が存在する。
なにかってとそりゃ物語の主要人物にバンドマンがいて、そこが話を進めるのでバンドの楽曲が歌われる。しかも生バンド、しかも劇団員生演奏と歌唱、しかもまったくチープじゃなかった。
むしろ「ちゃんと楽器が扱える選抜」という印象が強かった。この人たち本当に趣味でバンド組んでそう感の強さ、やばい。実際に楽器オーディションがあったとのことなので、そりゃあここまでになるか~というのと音楽リハもそこそこ合ったみたいなので普通にスピンオフとして彼らのバンド機器に行きたさがある。
決してプロレベルという訳ではなかったけれど、そこが余計によかったというか、妙にメッセージ性の高い歌も「バンド」というキーがあればなんら気にはならない。
Hagt?初演の「アイドルだから歌う」がウケた事により謎に歌って踊ることを続けていて、まあそれはそれで色としてアリかくらいのとこまで受け入れられるようになってきたけど「やっぱり歌うなら歌うなりの理由がほしい」と思ってしまうのは、私が彼らに求めてるのがエンターテイメントではなく演劇なんだろうなと痛感させられた。

若干話がそれるのだけれど、それに気がついて、ここ最近私とプレステージのやっている事との違和感の齟齬がやっと理解出来た気がした。
私は多分彼らにどこまでも「演劇」を求めていて、けれど彼らは千本桜ホールを飛び出ると共にどちらかというと「エンターテイメント」の方向へと進んでいった。
そうか、だから何かが上手く噛み合わなくて、「劇団とは」みたいな謎の悩みに襲われてた時期もあったんだなあという事に今更気がつけたのは、私が劇団プレステージに対して前のめりではなくなったからこそなんだろうなと思って、なんとも難しい気持ちになったりなんだり。
けれどその「エンターテイメント性」を高めた事により、今回それがガチっと「演劇」の形に還元されていたように見えたので、個人的に心の中で何か1つ和解が出来た気がする。またの名を「納得」とも言う。


あとは、劇団プレステージの舞台を観に行くたびに言ってしまう「結城洋平」という人物の大きさが、私の中でどうしても引っかかり続け、「ああこれに結城くんがいたらこの役かなあ」とか思ってしまうような日々を過ごしていく中で、今回の作品は完全に結城洋平が存在していないというか、仮に彼が今現役の劇団員だったとしても演じる役どころが存在しないと思える、今の劇団プレステージがあるべき姿というか、なんだ~日本語が難しいぞ。とかく、個人的な意見でしかないけれど作品としても、劇団としても、「これだ」とカチッとくる感じがあった。
しかもその結城くん自体も今度独立して公演を行うらしく、その公演のチラシが置いてあるあたり、「結城くんがいたから今の劇団プレステージはあるし、結城くんが退団したから今の劇団プレステージがあるんだな」と思わせてくれて、それがとてもハートフルだった。日本語が上手く綴れなくなってしまった。
それも多分、ほさかさんが結城くんがいる時の劇団プレステージとは関わってないからかなあとか思ってしまったりした。某氏の作品には絶対結城くんを匂わせる役が存在してしまっていたのがあんまり得意ではなかったので(いなくなった人はいなくなった人なので)、やっと自分もその呪縛から解放されたのかも~とか思った。よくわからん。それだけ結城くんがいる劇団プレステージが好きだったんだよ、私とその周りは。
でもきっとそういうのも観てきた側が勝手に決め付けて受け入れられなくてという部分が強いと思うし、なんだ客って言うのは本当にセンシティブだし身勝手なもんだなと我ながら笑ってしまった。


今回の脚本はオリジナル書下ろしではなくて、以前ほさかさんが作ったものを少し手を加える予定…が、大幅に再構築しなおしたものと称していた。
完全に書き下ろしだと思っていたのでちょっとびっくりするくらいしっくりきていたので、是非次回は完全書き下ろしでプレステージに作品を提供して欲しいな~。
とかく、何より、この舞台全体が不器用でがむしゃらで熱っぽい感じで、私の好きな世界観だった。
「下手でも好きだから、やりたいから、誰かになにか届けたいから続けてきたんだろ。」というような、向野さんの台詞がなんだか妙に劇団プレステージっぽくて、ちょっと泣けてしまった。
高頭さんか誰かが「新たな劇団プレステージ」みたいな事をツイートしていて、なんとなくその言葉がしっくり来たような気がする。
どこか新しいけれど、それでもきちんと劇団プレステージの芯を貫いていたのでとてもよい9月の始まりを迎えることが出来た。

メインテーマの「リサウンド」が普通にとんでもなくいい曲で、メロディラインも歌詞も好きなのでこれをロビーで売って欲しかった。完全に今回単独のオマージュ的なCDとして。普通に買ったのにな~。どっかで音源販売されますように。