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夢は座席で安楽死。

観る→考える→想う→書く。

【舞台】きみはいい人、チャーリー・ブラウン

きみはいい人、チャーリー・ブラウン

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@シアタークリエ
2017年4月9日~25日

http://www.tohostage.com/charlie/

スヌーピーがミュージカル?スヌーピー役をアッキー???チャーリー・ブラウンが村井先生!?!?!?!?!
これは行くしかない、どう考えても行くしかないと思って日比谷ダッシュ。
新年度の晴れやかな日々にそぐわない大雨の中、京浜東北線に乗ったら有楽町をすっ飛ばされたものの遅刻せずにクリエへ。平日は快速に気をつけねばいけなかった。

感想ぱらぱら

「やることなすこと裏目に出る。全くさえないけど、とにかくいい人。」なチャーリーを村井良大、そしてスヌーピーという”犬”役に中川晃教という布陣が面白くないわけないだろ!という、ある種キャスト面では物凄く期待をしていて、ただ作品的には「面白かったかな」で終わるかな~という程度の少し失礼なニュアンスで劇場に向かった所、フタを空けてびっくり「8割程度どころか120%面白いやんけ……」と驚愕、更には今作品のメッセージが刺さりすぎて思わず泣く次第。
最近、自分の予想に反する作品現れるという嬉しい誤算が多すぎる、ありがたい。

村井くんに「ごく普通の一般人(出来ればちょっと自己肯定力が低い)役を演じて欲しい会」の会員としては、もう村井くんがチャーリー・ブラウンという「まさに絵に描いたようなそれな!」の役を演じるという事と、更に言えばミュージカル界きっての歌の擬人化・人間ではないのでは代表中川アッキーが「人間ではない役」をやるというこのコンボ自体が面白くならない訳がないのに、どこか信用しきれなかった自分を許してください東宝さま……。
と、思いながらも、これは多分中川アッキーを知っている人間はメタ構造的に楽しめる部分もあるけれど、まるでまったく中川アッキーがどういう人なのかを知らない人が観たら、私が感じた面白さは生まれないと思うので評価はまた異なってくる気がした。
とりあえず私はめちゃくちゃ楽しかった。


はじまる前の前アナが村井くん演じるチャーリーによるものだったのだけれど「この劇場は安全だよ。地震があってもびっくりしないでその場に座っててね、PTAもきっとなんとかしてくれるからさ」というような「あんまりそれアナウンスになってないのでは」なアナウンスをしながらも、クリエの係員を「PTA」と呼ぶことに対して、何かしらの異世界に飛び込んでしまった感があって具合が悪くなった(よい方の意味で)。
あと「この劇場は安全です」が凄い好き、本当なのか、ゴジラがきても平気なのか、なあ。

めちゃくちゃネタバレがっつりだが、衣装とかセットについては下記をご参照いただきたい。
(出来る事ならリンク先のレポも読むと更に色々ヤバイのでぜひ。)


とりあえずなんかもう「ヤバイ」しか出てこなくて、久々に人語を失った気がしていた。

RENTのマークしかりだが、自己肯定力が低かったり、どこか凡人力が強く、人間らしい葛藤をする役を村井くんがやっているのを観るのが異常な程に好きなので、ランチを一人で食べて「この時間が苦痛だ」と言っていたり、凧揚げが上手くできなくてグズグズ言う村井チャーリーを観れた事は2017年度早々にして「この村井がアツい!inシアタークリエ」の記録を塗り替えたといっても過言ではない。(しかしこの記録は7月のRENTで再び塗り替えられるに違いない。)
それにしても村井くんの金髪くるくるパーマは人を殺すなあと思ってしまい、私のような一般市民でもそう思ったのだから、村井くんのおたくはさぞ大変なのでは…といらん心配をした。ちなみに私が仮に村井くんのおたくをやっていたら仕事を辞めて地方も合わせて全通したと思う。それくらいいい村井くんだった。
村井くんの話から一旦離れよう。


マンガのコマ割りみたいな美術セットと、シンプルだけれどきちんと「ピーナッツ」の世界観を髣髴とさせるような色合い・描き方・フォント選びがされた大道具たちが可愛かった。
後は背景に使われていた不思議な動きをするセットが気になった、フェードイン・フェードアウトみたいな効果が見られるあの背景は面白かった。
全体的に低コストの中でこだわるべきところをこだわっていた感じがして、いい意味での「手作り感」というか、ピーナッツの世界観を華美にしすぎないという意味でのシンプルさみたいなのが好きだった。
また、小さめなセットを6人しかいないキャストが転換する際に運んだり、モブ役もキャストが兼任したりと、「舞台上に6人以上現れない」のが私は好きだった。
決してチープといいたいわけではなくて、大きい劇場を使って「コンパクトにまとめている」のがとても贅沢だったし、それでいてきちんと世界観を守っているのが素晴らしい。

上演時間は1時間+休憩+50分の2幕で2時間10分なのだけれど、今回の作品の作り方が本当に面白くて、マンガを読んでいるみたいだった。
短いものだと30秒くらいのアイキャッチ的な2コママンガみたいなシーンもあれば、5分程度の小さいネタ、歌うナンバーを挟んだ10~15分程度の話などが組み合わさって構成されている。
ショートショートとはまた違って、それぞれがバラバラに入り込んでくるときもあれば、話が交差したりもする。
上手く説明が出来ないのだが、4コママンガの単行本を読んでいて「おにぎり①」というマンガの後に暫く別のマンガがあり、最後に「おにぎり②」という天丼の4コマを持ってくるみたいな瞬間もあって、ミュージカルなのにコミックの世界だったのがとても素晴らしかった。
1幕はどちらかというと「平凡な日常」のショートショート、2幕は自分の事を見つめたり凹んだりした上で今回の主題に持っていくような少し深い話。
全体的に「ピーナッツ」独特のあの哲学感やら自己啓発感が織り交ぜられていて、ハッとするような台詞もあれば、シニカルなものも多々ちりばめられていて、単純にただただ「スヌーピーのミュージカル」として楽しめたのがよかった。
何かというととにかくテンポがよくて、まるで自分でページをめくってマンガを読んでいるような気分にさえされた。


今回はミュージカルなので勿論歌うのだが、作中で「歌う」シーンが出て来た時に、きちんとキャラクターとして「余り上手ではない歌声」が聞けるシーンが面白い。
ちなみに6人とも歌唱力は素晴らしいので逆に語る事がなくなってしまった。
また、アッキー演じるスヌーピーが「はしゃいでいる」時に「歌う」ので、犬が犬として歌っているというより、「人の心を持った犬の感情が歌で表現されている」みたいな、擬人化的扱いではないのが私の中ではめちゃくちゃ好評価だった。
後はスヌーピーといえば「人間のように振舞う」という特徴があるので、きちんとそこが切り替わっていて、「スヌーピーから見た世界で人間として振舞うスヌーピー」と「スヌーピー以外から見た世界で犬として扱われるスヌーピー」の切り替えが面白い。
というかアッキーが思っていた500倍は犬でびっくりした。鳴き声どころか動きまでも犬そのもので、これが本物か…と思わされてしまった。

今回アッキーはそこそこ歌うのだが、2幕終盤で「サパータイム」という夕飯を喜ぶ歌を歌うソロタイムがある。それまでシンプルで統一されていた照明にいきなりLEDが投入され、派手な照明も追加される。
上手い事が言えなさ過ぎて「わかる」しか言えなくなった自分を呪いたかった。しかしあの面白さはやはりアッキーを知ってるからこそかなとも思うし、けれどとりあえず「わかる」に尽きるのであった。


キャストについて細かく書こうと思ったのだが、「言葉はいいからもう観てくれないか」という位に6人全員が素晴らしかったので、出来れば劇場で体感して欲しい。
村井チャーリーも、中川スヌーピーも、高垣ルーシーも、田野サリーも、東山シュローダーも、古田ライナスも、皆みんな素晴らしくてかわいらしくて最高だった。
個人的には古田ライナスの「これはずるい」度合いがカンストしており、特に2幕のルーシーを慰めるシーンで50人は死んでもおかしくないと思ったので古田くんが好きな方はクリエに行って欲しい。
毛布とペアダンスを踊る古田ライナスの身の軽やかさにひっくり返りそうになった。
後はセット全体が大ぶりに作られていて、キャストが6人しかいないのもあり全体的に皆がきちんと小さく見えている(衣装のサイズ感もナイスすぎる)ので、そのあたりも是非肉眼で~という感じ。


この作品のメッセージを受けて

本編中ラストに歌われる楽曲「ハピネス」の歌詞、及び今回の作品のキャッチに使われている一説。

幸せは誰にもどこにもある、きみが愛せば

今回のこの作品は、明確な起承転結がある訳ではなくて、本当にピーナッツのマンガを読んでいるように「ただ単調に繰り返される平凡な彼らの日常」をトリミングして私達に見せてくれている。
決して何か物凄い事件が起きるわけでも、人が死ぬわけでもないし、逆に誰かが何かをなしえたり、物凄くハッピーになったりするわけでもない。
本当に「ただそれだけ」のありのままの日常が描かれている。そして大事なのは「それ」なのだ。

「ただそれだけ」なような「等身大の平凡な日々が送れること」自体がとても平和なことで、探せば悪意に満ちた事もあっても、逆に言えばあなたの受け取り方次第で、あなたにとって優しい人も、愛してくれる人も、幸せも、全部全部あるんだよ。でもそれはあなたが愛したらね、というのが刺さりすぎて、気がついたら結構な勢いで泣いてしまっていてびっくりした(のは多分隣の席の人だと思う)。

結局は受け取り方の問題で、自分の事を低く評価していたって「いい人」と言ってくれる友達がいて、自分と目すら合わない大好きなあの子も鉛筆をかじる癖がある自分と同じ人間で、生きてる価値がわからない自分にだって愛してくれてパンを半分こできる兄弟がいる。
少しだけ視野を広げて周りを見渡してみれば、自分の事を好きな人も、評価してくれる人もいるのだから、悲しい事ばかりに目を向けないで楽しい毎日を過ごして、自分を愛してくれる誰かを見つけよう、そして楽しい時間をすごして、自分も愛そう。そうしたらもっと幸せだよね。みたいな。
「日常の中のささやかな幸せの話」に飢えていた私としてはこのタイミングでこの作品を観る事によって「よし、もっと頑張ろう」と思えてとても嬉しかった。
そしてこの作品に出会えたこともまた「日常の中のささやかな幸せ」の一つなので、幸せはやっぱり誰でも何にでもあるのだ。私が芝居を好きだから、芝居を愛せば、芝居から幸せを与えて貰える。きっとそれだけ。
そういう「日常の中のささやかな幸せ」を沢山積み重ねて、もっともっと幸せになっていきたいし、自分の周りの人間を愛したり幸せにしていきたいなあと思える新年度の観劇だった。